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「学習者の年齢、言語習得段階を考えた児童英語教育」

黄金井 健夫(東洋女子短期大学教授・日本LL教育センター理事)


◆ 学習者の年齢、言語習得段階を考えた児童英語教育

「総合学習における国際理解に関する学習」の一環として多くの小学校で英語教育が開始されてから「児童英語教育」が注目を集めています。

しかし、現時点では「児童英語教育」と「小学校における英語教育」は、講師や教育環境等の上から異なったものと考える必要があります。また、同じ「児童英語教育」(この場合、幼児等も含む)でも、年齢、言語習得段階(学習期間)によっても目的、指導方法が異なってきます。

◆ 右脳から左脳を使った英語教育へ導く
〜いつまでも"ゲームだ! 歌だ! 楽しい!" だけで良いのか?〜


多くの教室では様々なゲームや歌、チャンツ、絵本、紙芝居、劇そしてハローウィンやクリスマスのイベント等々の方法を用い、「英語を楽しく学ぶ!」マイナス思考で言うならば「英語嫌いを作らない!」という考え方で英語教育が行われています。

これは、いわゆる「右脳」を使った教育です。この「右脳」を使った教育は様々な経験・体験を通し、長期記憶に結びつく良い方法です。この場合、ゲーム等を英語で行うことが目的であり、言語学習的にどのような表現を学習するかは目的ではありません。小学校1〜2年生まで、また、3年生以上でも入門期の間はこれでよいでしょう。

  しかし、幼児または小学校1年生から英語を学習している子どもたちが5、6年生になってもこれでよいのでしょうか。

  やはり、ある段階から「左脳」を使った言語教育が必要になってきます。ある表現、構文、文法等の言語的な目標に向かった指導が必要なわけです。

  つまり、この段階では、ゲーム等はそれを行うことが目的ではなく、その目標を達成するための方法の一つとして利用すると言うことです。同じゲームでも、小学校1〜2年生や入門期の子どもたちに対して行うのとは目的が異なるのです。これを視野に入れた「児童英語教育」のカリキュラムで行われていない児童英語教育は、結局は「英語嫌い」を作り出してしまう事になってしまいます。

◆ 現在の児童英語教育のシステムで本当に話せるようになるか?

無理です。英語ができるようになるのは年2,000時間の学習が必要という説があります。「如何に多くの時間その言語に触れるか。」が語学学習の決め手です。週1日、50分または90分の教室での学習では不可能です。

そのために、子どもたちの年齢、学習段階を踏まえた指導目的、指導方法を明確にした授業が大切になってくるのです。

子どもたちは児童英語教育を受けたからと言って英語ができるようにはなりません。

しかし、この時期に「右脳」で学習したことは長期記憶となり、いつか思い出すものです。また音声学習(発音、Listening)の効果を上げるには、この時期の学習が重要となってきます。



「小学校に英語活動が取り入れられて 〜児童英語指導者の方へ〜」

久埜 百合(中部学院大学短期大学部 客員教授・えいごリアン企画委員)


長い年月の間、さまざまな論議が重ねられ、2年間の移行措置を経て、2002年に小学校教育課程の「総合的な学習の時間」という枠の中で「国際理解」の一環として、英語活動が導入されることになりました。教育委員会や校長先生の裁量によって、その導入の形が決められ、実施に移されますので、日本全国の小学校で、「英語活動」をどのように取り入れているか、実態を掴むのが大変難しい状況です。(2002年2月の文部科学省の発表によりますと、小学校で国際理解教育を実施した学校は全体の70%弱に達しています。)

その間に、2002年、文部科学省から、「英語が使える日本人の育成」のための行動計画が発表され、日本人にとって英語の必要性が、今まで以上に前向きに検討されるようになりました。学校教育に任せるだけでなく、民間も協力して、英語を使いながら仕事のできる社会人を育成するために、指導の内容や技術を改善していこうという意気込みが感じられます。

このような社会的な要請を受けて、私どもの日本LL教育センターの責任も重くなったといえましょう。私たちは、更に研究を続け、指導計画を練り、お子さまたちの英語習得のお手伝いをし、将来英語運用能力の高い社会人として、活躍していただきたいと思います。

指導に当たる先生方も、児童英語教育界にあふれるような教材や指導技術の中から、より優れたものを選択し、教室活動に活かすように、日ごろから研鑽を続けておいでになることと思います。全国の小学校の先生方が英語活動の指導をなさるために、文部科学省も全国で研修講座を開講しています。それに準じて、教育委員会でも研修講座を設け、更に各小学校でも独自の研究会を続けておられます。こうして、非常にたくさんの方々がこの国民的な大事業に関わることになりました。これをお読みくださる方の中には、ボランティアとして、小学校に出かけて、英語活動の授業に参加しておられる方もおいでになることでしょう。

英語に触れる子どもたちは、とても明るく、楽しげに活動し、この動きに少しでも不安を持っておられた方々は、「英語を導入してよかった」と思わせられたはずです。指導の目的が「英語に慣れ親しませる」ことで、「英語を教える」ことではない、といわれながら、子どもたちは確かに英語を身につけ始めています。大人たちが、"こうして英語を教えたい!"という指導法ではなく、"こんなふうに英語が使いたい!"と待ち受けている子どもたちの心を動かすことのできる指導方法が、英語習得の近道だと思います。子どもが「ことば」を習得する姿を忠実に観察し、大人の思い込みを削り落として、子どもに寄り添った指導方法を求めていきましょう。そして、英語を使って、ボーダレスの社会への窓を大きく開いて、世界に羽ばたいて行く子どもたちのサポーターになりたいものです。



「21世紀の英語教育 "英語教育=外国人"という誤解を考える
〜保護者の皆様へ〜」

松崎 博(大正大学・武蔵野大学講師)


◆ 冷静ですね、子どもって

外国人教師が中学や高校、最近は小学校でも導入され、教育環境は整ったと言われますが、そのお蔭で子どもたちの英語力が大幅に伸びたという話を、私は一度も聞いた覚えがありません。皆さんはどうですか? 青い目の教師への期待って、学ぶ子どもたちより、親御さんのものですね。子どもたちって「外人先生はつまらない」って意外と冷めているんです。

  冷静ですね、子どもって。「21世紀は英語の時代!」と言われながら、普段の生活は今のところ日本語一本で問題なし。子どもたちは既に見破っています。外国人教師の力量もバレバレなんです。一部の専門家を除いて、英語を母語としている人でも、英語を教える技術や経験を持っているわけではないのですから。

◆ 「英語教育は外国人でなければ」という思い込み

なのに「英語教育は外国人でなければ」という親御さんの思い込みは、ときに狂信的ですらあります。よほど自分が英語を話せないのは、日本人教師に英語を教わったからだと確信しているのでしょう。

そんな思いに調子を合わせてきた英語ビジネス界もいけませんね。

教師経験の浅い外国人にとって、子どもたちと遊ぶことが"英語を指導する"という格好のアルバイトになっちゃったのですから。

◆ 外国人信仰からの解放

さすがに最近は、外国人信仰から解放された親御さんに出会う事が多くなりました。私が主宰する英語教室にも、このところ「お遊戯と歌には飽きた」という子どもたちが連続して入って来ました。とても利発な子どもたちで、親御さん曰く「もっと勉強したいって言うんです」と。

そうなんです、子どもは勉強好きなんです。とても知的で向学心に充ちています。英語を教えることって、お遊戯したり、歌をうたったりでお茶を濁すことではなく、もっと実体のあるしっかりした教育であるべきだと思うんです。

  外国人教師だけの教室からの転校生も多いですよ。団体でドタドタとやってきます。転校理由を聞くと「全く学習になっていない。遊びオンリー」だそうです。外国人の先生だから英語がペラペラになると思ったのにと、皆さんガッカリ。お母さん、週1回50分レッスン、年間でも40時間程度の指導で、英語ペラペラを期待しちゃいけません。1000時間やればかなり話せるようになります。でも25年間かかるかな。お子さんは35歳になっちゃいますが、って脅かしちゃいます。

◆ 日本で生活しながら英語力をつけるには?

そもそも、英語が話せるようになるには、頭の中に英語専用の言語回路を作らなければなりません。日本人が日本語を話すのは、日本語を聞き続けて、頭の中に日本語の言語回路を作れたから話せるんです。英語を聞き続けないと、英語の言語回路が作れません。

その意味で外国人教師が英語だけで指導をすることには意義があるのですが、但し、年間で40〜45時間程度の授業だけでは、誰がどのようなメソッドを駆使しても言語回路を作るには、絶対時間数が不足しています。せめて1日1時間、450日間英語を聞き続けさせる工夫が必要です。

日本で生活しながら英語力をつけさせるには、その450時間を実践する努力が必要です。これはそうとう大変です。お遊戯している場合ではありません。成人の場合は本人の努力ですが、子どもの場合は親の努力ですね。一番いいのは親と子が共に学ぶことです。最近、旺文社から「親子で遊ぼう! ノリノリ英語ゲーム改訂版」という素敵な本が出ました。推薦します、私の本なので。



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